米投資銀行決算発表前後。SEC新議長就任で金融機関に対する規制の流れ

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米国金融機関に対する規制の流れ

前回、「4月14日(水)、GS、JPM、WFCから始まる米大手金融機関の決算発表では、来期以降のEPS予想のダウンサイドへの変化に注目が集まると考えます。」と投稿いたしました。

このように考えた理由は、3月のFOMC直後に決定されたSLR(米国債をリスク資産としてはカウントしない緩和措置)延長中止、3月26日に発生したアルケゴスキャピタルと投資銀行間で行われた「トータル・リターン・スワップ(TRS)」取引問題に対する規制導入準備報道、ロシア債券新規購入禁止措置等々、3月中旬から矢継ぎ早に金融機関にとって収益機会を減少させる法規制導入・報道が、あったからです。

4月14日~16日の決算では、下記の通りWFCとUSBを含む比較対象とした全ての銀行が、2021年4月~6月期のEPS見込を1Q実績よりも低く見積りました。筆者は、前述の金融機関に対する規制強化の動きを、2Qの収益予想に反映させた結果と考えます。

しかしながら決算発表から3週間以上経過した5月9日現在でも、「米国投資銀行・金融機関の決算は絶好調」といった論調の記事を見かけることがあっても、(私見です)マスコミのスポンサーに対する配慮が理由なのか、銀行、自らが上記の表にあるようにEPS予想減少を解説している記事を見かけません。

決算と前後して、「金融規制のプロ」と恐れ称されるGary Gensler 氏がSEC委員長に就任しました。以降、SPAC、仮想通貨、TRSに対する規制等々、規制強化に関する記事を日々見かけるようになりました。財務省やSECと一枚岩の関係にある大手投資銀行ですので、Gary Gensler氏SEC就任の動きを先取りして、自らの業績見込みを低く設定したのだと考えます。

以下、参照下さい。

  1. (YouTube動画)Gary Gensler 氏、SEC就任前の公聴会の発言
  2. バイデン政権がロシアに追加制裁、新発ロシア国債の購入制限
  3. 米証券取引委員会(SEC)委員長 ゲーリー・ゲンスラー氏 ウォール街が恐れる「番人」

  4. 世界の金融機関で損失1兆円 アルケゴス問題まとめ読み

  5. 米SEC委員長、「隠れみの」開示強化も アルケゴス問題

  6. 米上院、ゲンスラーSEC委員長承認-アルケゴスやSPACに対応へ

2021年3月19日(SLR 規制強化発表の日)を起点とする株価推移

米国主要金融の場合の株価の推移

DJI GS MS JPM C BAC WFC USB
03/19 32,627.97 344.20 82.94 155.14 73.01 38.53 39.63 54.79
03/22 32,731.20 339.33 81.92 150.97 71.96 37.66 38.97 53.83
03/23 32,423.15 331.77 79.12 149.46 70.91 36.90 38.24 53.18
03/24 32,420.06 328.65 79.33 150.62 70.08 36.90 38.12 53.07
03/25 32,619.48 330.55 80.13 152.55 71.72 37.66 39.30 54.48
03/26 33,072.88 327.39 79.98 155.09 73.02 38.68 39.76 55.79
03/29 33,171.37 325.73 77.88 152.68 71.58 38.31 38.44 55.18
03/30 33,066.96 332.01 79.09 154.48 72.96 38.99 39.39 55.87
03/31 32,981.55 327.00 77.66 152.23 72.75 38.69 39.07 55.31
04/01 33,153.21 327.64 78.22 153.71 73.14 39.49 39.63 55.83
04/05 33,527.19 323.54 78.00 153.62 72.75 39.80 39.48 56.37
04/06 33,430.24 327.06 79.09 152.54 72.60 39.69 39.85 56.23
04/07 33,446.26 326.55 79.04 154.93 72.69 40.05 39.99 56.81
04/08 33,503.57 331.14 80.20 155.12 72.33 39.70 40.03 56.78
04/09 33,800.60 330.81 80.72 156.28 72.42 39.99 40.50 57.29
04/12 33,745.40 331.84 80.18 155.95 72.69 40.06 40.77 57.68
04/13 33,677.27 327.68 79.53 154.09 72.06 39.32 39.79 56.63
04/14 33,730.89 335.35 80.79 151.21 72.91 39.88 41.99 57.58
04/15 34,035.99 338.55 80.82 152.17 72.54 38.74 42.24 56.33
04/16 34,200.67 342.31 78.59 153.30 72.45 39.15 43.74 57.86
04/19 34,077.63 343.09 79.69 152.65 71.63 39.17 43.78 57.72
04/20 33,821.30 331.88 76.96 149.27 69.31 38.08 42.45 56.22
04/21 34,137.31 335.27 78.91 150.54 70.16 38.72 43.15 56.99
04/22 33,815.90 330.85 77.96 147.37 69.33 38.36 42.61 56.16
04/23 34,043.49 339.35 80.61 150.19 70.89 39.18 43.76 57.23
04/26 33,981.57 343.52 81.18 150.56 71.70 39.41 44.04 57.79
04/27 33,984.93 346.63 81.61 151.25 72.49 39.88 44.99 58.32
04/28 33,820.38 348.11 82.38 152.23 72.41 40.03 44.98 58.97
04/29 34,060.36 352.97 83.64 155.19 73.33 41.11 46.14 60.03
04/30 33,874.85 348.45 82.55 153.81 71.24 40.53 44.95 59.35
05/03 34,113.23 350.16 82.46 153.36 71.71 40.56 45.38 59.29
05/04 34,133.03 349.84 82.64 155.48 72.33 41.00 45.64 60.60
05/05 34,230.34 357.62 84.51 157.52 73.71 41.39 45.84 60.39
05/06 34,548.53 365.97 86.83 160.69 74.78 42.01 46.63 61.44
05/07 34,777.76 370.89 87.70 161.24 75.08 42.18 46.54 61.37

3月19日の終値を100とした指数化チャート

各社のCash Flow と4半期EPSの変化(出典:Tradingview)

Goldman Sachs Group

Morgan Stanley

JPMorgan Chase Co

Citigroup Inc

Bank of America Corporation

Wells Fargo & Company

US Bancorp

参照:専門は暗号資産、バイデン政権「規制の凄腕」

 日経新聞 豊島逸夫(としま・いつお)

ウォール街でゲンスラー氏といえば、過去に米商品先物取引委員会(CFTC)トップで、大胆な規制強化を実行した「規制のプロ」として恐れられていた。その彼が米バイデン政権の証券取引委員会(SEC)トップに指名され、14日に上院で人事が承認された。承認に手間取るうちに、投資家交流サイト「レディット」の乱、投資会社アルケゴスの問題などが相次いで発生し、金融市場の整備・規制が喫緊の課題となっている。民主党急進左派エリザベス・ウォーレン上院議員などが強烈に突き上げている。

問題山積のなかで、ゲンスラー氏はまず暗号資産市場の整備・規制強化に取り組むことになりそうだ。同氏は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でブロックチェーンや暗号資産を専門に教鞭(きょうべん)をとっていた。承認当日に、暗号資産の交換所大手であるコインベースがニューヨーク市場に上場したのも象徴的だ。

まず規制の対象として議論されるのは、暗号資産業界の「悲願」といえるビットコイン上場投資信託(ETF)になりそうだ。そもそも暗号資産は「コモディティー」と見なされ、CFTCの管轄下になる。しかし、ETFとなれば監督機関はSECだ。

ETFができれば個人投資家の参入が加速し、暗号資産市場の裾野は広がる。空売りも可能になって、ヘッジファンドの参入で流動性も急増が見込まれる。長期的には、上昇トレンド一辺倒だったビットコインの価格には下押し圧力もかかり、健全な価格形成になるともいえる。

このビットコインのETFを、SECはこれまでことごとく退けてきた。なぜか。

筆者は金のETFの米国市場での上場で、SECと交渉した経験がある。ゴールドを原資産とするETFで、SECが最もこだわったのは原資産の価格に正確に連動するのか、という点だった。ETFと原資産の価格の乖離(かいり)をSECは最も嫌う。正確に連動することがETFの原点なのだ。

そこで顧客の売買注文に値付けするマーケットメーカーの存在が重要視される。特に市場が荒れた時、常に適正なオファー(売値)とビッド(買値)をリーズナブルな値差(スプレッド)で、自らリスクをとって示す機能が不可欠だ。このマーケットメーカーが3社は必要とされている。

この点が暗号資産では難関となろう。暗号資産の価格のボラティリティー(変動性)は異常に激しい。原油のETFでも同様の問題があったが、その比ではない。暗号資産ETFは原資産の価格変動からの乖離が頻繁に生じかねない。

マーケットメーカーの適役として、大手投資銀行のトレーディング部門の参入が望まれる。だが、アルケゴス問題の記憶は鮮明で、彼らは自己勘定による暗号資産の売買を許容できる状況ではあるまい。

暗号資産の先物市場の整備、市場参加者の財務基盤強化、コンプライアンス(法令順守)の徹底が急がれる。暗号資産と金融市場の知見が必要なだけに、ゲンスラー氏は適任だ。暗号資産業界からも期待される人事だろう。

バイデン政権内でもイエレン財務長官は暗号資産に強い拒否反応を示す。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長も、「投機的」などと発言し好意的ではない。中央銀行の通貨発行・管理の外にある暗号資産は「目の上のたんこぶ」とみえるのだろう。

ゲンスラー氏に待ち受けるのは暗号資産だけではない。

オンライン掲示板「レディット」を舞台にした米ゲームストップ株の短期売買を巡っては、ネット証券が手数料を無料として個人から受けた売買注文を高速度取引業者に回してリベートを受け取る制度にメスを入れる必要がある。高速度取引が席巻する時代に、売買契約成立から清算まで2日かかるという長年の業界慣習も短縮が望まれる。契約から清算までの期間が長いと当事者の追加証拠金不足など債務不履行発生の確率は高まる。これは市場の清算インフラ構造の改革なだけに相当の時間を要する。

ヘッジファンドの空売りへの規制強化や透明化も必要とされる。空売りには、過熱した価格上昇を冷やす機能もあるので、バランス感覚が求められる。

そしてアルケゴスの問題では、個人資産の管理会社である「ファミリーオフィス」の透明化や投資銀行のリスク管理の見直しなども必要だ。

規制緩和に徹したトランプ政権時代に骨抜きにされたSECは、バイデン政権下で再建が急がれる。「規制のプロ」の腕の見せどころでもあり、ウォール街は警戒感も抱きつつ見守っている。

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