米投資銀行決算発表。日米欧金融機関の直近株価推移を再点検

投資関連情報

4月14日(水)、GS、JPM、WFCから始まる米大手金融機関の決算発表では、来期以降のEPS予想のダウンサイドへの変化に注目が集まると考えます。

3月17日~18日のFOMCでは、金融政策の現状維持を決定。2023年末まで利上げ無しとの見通しが改めて示され、金融緩和姿勢の継続が強調されました。そのハト派的流れに反し19日の書面による発表では、SLRの延期は無し。たった10営業日後の4月1日以降は米国国債の持ち高をリスク資産に計上するように求められました。この予想外の規制強化の決定こそが、アルケゴスによるスーパー・ハイレバレッジ投機の梯子外し=破綻に繋がったと思います。

規制強化=リスク資産の縮小(ポジション落とし)になりますので、大手金融機関の収益機会が減少します。

もし、来期以降のEPS予想を想定外に低く見積もる会社が多いようであれば、10年債利回りの急速な上昇を招くことでしょう。

米国主要金機関の決算発表スケジュール

Schedule Ticker Code Company Name 04/09 Close Price Estimated EPS
04/14 (Wed) GS Goldman Sachs 330.81 9.83
JPM JP Morgan Chase 156.28 3.06
WFC Wells Fargo 40.50 0.68
04/15 (Thu) BAC Bank of America ML 38.53 0.65
C Citigroup 72.42 2.52
USB US Banco 57.29 0.95
04/16 (Fri) MS Morgan Stanley 80.72 1.68

Earnings Announcement Schedule = Before Market Open

直近の株価、予想EPS(4月9日のEPSよりも増加しています)

Schedule Ticker Code Company Name 04/13 Close Price Estimated EPS
04/14 (Wed) GS Goldman Sachs 327.68 10.22
JPM JP Morgan Chase 154.09 3.09
WFC Wells Fargo 39.79 0.70
04/15 (Thu) BAC Bank of America ML 39.32 0.66
C Citigroup 72.06 2.60
USB US Banco 56.63 0.96
04/16 (Fri) MS Morgan Stanley 79.53 1.70

2021年3月19日(SLR 規制強化発表の日)を起点とする株価推移

米国主要金融の場合の株価の推移

GS MS JPM C BAC WFC USB
03/19 344.20 82.94 154.23 73.01 39.99 39.63 54.79
03/22 339.33 81.92 150.09 71.96 39.70 38.97 53.83
03/23 331.77 79.12 148.58 70.91 40.05 38.24 53.18
03/24 328.65 79.33 149.74 70.08 39.69 38.12 53.07
03/25 330.55 80.13 151.66 71.72 39.80 39.30 54.48
03/26 327.39 79.98 154.18 73.02 39.49 39.76 55.79
03/29 325.73 77.88 151.79 71.58 38.69 38.44 55.18
03/30 332.01 79.09 153.58 72.96 38.99 39.39 55.87
03/31 327.00 77.66 151.34 72.75 38.31 39.07 55.31
04/01 327.64 78.22 152.81 73.14 38.68 39.63 55.83
04/05 323.54 78.00 153.62 72.75 37.66 39.48 56.37
04/06 327.06 79.09 152.54 72.60 36.90 39.85 56.23
04/07 326.55 79.04 154.93 72.69 36.90 39.99 56.81
04/08 331.14 80.20 155.12 72.33 37.66 40.03 56.78
04/09 330.81 80.72 156.28 72.42 38.53 40.50 57.29

3月19日の終値を100として指数化。ベンチマークとしてDJIを追加

DJI GS MS JPM C BAC WFC USB
03/19 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00
03/22 100.32 98.59 98.77 97.32 98.56 99.27 98.33 98.25
03/23 99.37 96.39 95.39 96.34 97.12 100.15 96.49 97.06
03/24 99.36 95.48 95.65 97.09 95.99 99.25 96.19 96.86
03/25 99.97 96.03 96.61 98.33 98.23 99.52 99.17 99.43
03/26 101.36 95.12 96.43 99.97 100.01 98.75 100.33 101.83
03/29 101.67 94.63 93.90 98.42 98.04 96.75 97.00 100.71
03/30 101.35 96.46 95.36 99.58 99.93 97.50 99.39 101.97
03/31 101.08 95.00 93.63 98.13 99.64 95.80 98.59 100.95
04/01 101.61 95.19 94.31 99.08 100.18 96.72 100.00 101.90
04/05 102.76 94.00 94.04 99.60 99.64 94.17 99.62 102.88
04/06 102.46 95.02 95.36 98.90 99.44 92.27 100.56 102.63
04/07 102.51 94.87 95.30 100.45 99.56 92.27 100.91 103.69
04/08 102.68 96.21 96.70 100.58 99.07 94.17 101.01 103.63
04/09 103.59 96.11 97.32 101.33 99.19 96.35 102.20 104.56

指数化チャート

  • 米国を代表する地方銀行USBancoだけがベンチマークとなるDJI指数をアウトパーフォーム
  • ウェルズ・ファーゴとJPMは、ほぼDJIに近い値動き
  • Citigroupは、DJIをアンダーパーフォーム
  • モルガンスタンレー・アメリカ銀行ML・ゴールドマンはDJI比較で6%程度のアンダーパーフォーム

ビル・ファン氏のプライベートオフィス・アルケゴスの破綻では、MS、GS、CS、野村、MUFGに関して多くの報道がありました。BAC:アメリカ銀行MLの関与の報道は無かった(気づかなかった)ですが、チャートはBACの関与を示唆しています。また、GSは損失を免れたといった報道がされていますが、モルガンスタンレーと同様に、株価の下落は、株主からの信頼失墜を表しているように思われます。

NY市場における野村証券、3メガ銀行の株価の推移(ドル建)

DJI NMR(野村) MUFG SMFG(SMBC) MFG(みずほ)
03/19 32,627.97 6.46 6.01 7.88 3.18
03/22 32,731.20 6.50 5.98 7.85 3.18
03/23 32,423.15 6.47 5.74 7.61 3.09
03/24 32,420.06 6.40 5.66 7.48 3.06
03/25 32,619.48 6.61 5.79 7.61 3.10
03/26 33,072.88 6.61 5.82 7.74 3.14
03/29 33,171.37 5.68 5.66 7.48 3.06
03/30 33,066.96 5.55 5.55 7.45 3.05
03/31 32,981.55 5.36 5.38 7.25 2.91
04/01 33,153.21 5.36 5.47 7.20 2.92
04/05 33,527.19 5.46 5.54 7.36 2.98
04/06 33,430.24 5.41 5.45 7.20 2.90
04/07 33,446.26 5.37 5.46 7.25 2.92
04/08 33,503.57 5.30 5.35 7.12 2.90
04/09 33,800.60 5.41 5.40 7.15 2.92

日系4銘柄、3月19日の終値を100として指数化。

DJI NMR MUFG SMFG MFG
03/19 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00
03/22 100.32 100.62 99.50 99.62 100.00
03/23 99.06 100.15 95.51 96.57 97.17
03/24 99.99 99.07 94.18 94.92 96.23
03/25 100.62 102.32 96.34 96.57 97.48
03/26 101.39 102.32 96.84 98.22 98.74
03/29 100.30 87.93 94.18 94.92 96.23
03/30 99.69 85.91 92.35 94.54 95.91
03/31 99.74 82.97 89.52 92.01 91.51
04/01 100.52 82.97 91.01 91.37 91.82
04/05 101.13 84.52 92.18 93.40 93.71
04/06 99.71 83.75 90.68 91.37 91.19
04/07 100.05 83.13 90.85 92.01 91.82
04/08 100.17 82.04 89.02 90.36 91.19
04/09 100.89 83.75 89.85 90.74 91.82

日系主要金融4銘柄、指数化チャート

  • 4銘柄とも3月30日(火)は、配当落日です。
  • 4銘柄のうち、三井住友銀行を除く3銘柄のアルケゴス取引関与は報道されていますが、3メガ銀行は同じ値動きをしています。
  • 野村証券HDは、3月29日(月)に、アルケゴスとの取引で、20億ドル規模の損失を計上すると発表しました。4月11日(日)現在では、「特別調査チームを社内に設置、4月27日に通期決算を合わせて発表することを検討している」との発表があります。
  • アルケゴスとの取引関与は無いでしょうけれど、東証市場においては、3メガ銀行以上に地方銀行の株価下落が目立ちます。

NY市場における欧州系金融機関の株価の推移(ドル建)

DJI CS UBS DB HSBC
03/19 32,627.97 13.08 16.03 12.66 29.94
03/22 32,731.20 13.15 16.10 12.61 29.34
03/23 32,423.15 12.89 15.71 12.29 29.02
03/24 32,420.06 12.88 15.78 12.40 28.75
03/25 32,619.48 13.21 16.06 12.34 29.03
03/26 33,072.88 12.87 16.04 12.35 29.16
03/29 33,171.37 11.39 15.59 11.95 28.98
03/30 33,066.96 10.99 15.60 12.11 29.44
03/31 32,981.55 10.60 15.53 12.00 29.14
04/01 33,153.21 10.70 15.85 12.12 29.26
04/05 33,527.19 10.87 16.01 12.21 29.47
04/06 33,430.24 10.97 16.23 12.26 29.35
04/07 33,446.26 10.87 16.22 12.47 29.74
04/08 33,503.57 10.95 16.19 12.36 30.29
04/09 33,800.60 10.65 16.20 12.32 29.90

欧州系4銘柄、3月19日の終値を100として指数化。

DJI CS UBS DB HSBC
03/19 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00
03/22 100.32 100.54 100.44 99.61 98.00
03/23 99.37 98.55 98.00 97.08 96.93
03/24 99.36 98.47 98.44 97.95 96.03
03/25 99.97 100.99 100.19 97.47 96.96
03/26 101.36 98.39 100.06 97.55 97.39
03/29 101.67 87.08 97.26 94.39 96.79
03/30 101.35 84.02 97.32 95.66 98.33
03/31 101.08 81.04 96.88 94.79 97.33
04/01 101.61 81.80 98.88 95.73 97.73
04/05 102.76 83.10 99.88 96.45 98.43
04/06 102.46 83.87 101.25 96.84 98.03
04/07 102.51 83.10 101.19 98.50 99.33
04/08 102.68 83.72 101.00 97.63 101.17
04/09 103.59 81.42 101.06 97.31 99.87

欧州系主要金融4銘柄、指数化チャート

  • SCBやBNP等欧州系銀行、ANZ等オセアニア系銀行、中国系の金融機関の値動きも確認しましたが、有意な差は認められませんでした。

アルケゴスが関与していたと報道されている6銘柄の値動き

S&P500 GSX DISCA VIAC BIDU VIPS TME
03/19 3,913.10 86.60 77.27 97.35 257.47 45.45 30.42
03/22 3,940.59 83.79 74.65 100.34 266.13 45.25 30.87
03/23 3,910.52 73.44 71.68 91.25 261.55 45.58 31.79
03/24 3,889.14 69.50 61.94 70.10 239.19 35.81 23.18
03/25 3,909.52 66.75 57.75 66.35 204.57 31.95 20.36
03/26 3,974.54 39.01 41.90 48.23 208.61 31.19 20.10
03/29 3,971.09 31.78 41.23 45.01 204.70 28.47 20.34
03/30 3,958.55 33.29 43.44 46.61 218.23 30.93 21.34
03/31 3,972.89 33.88 43.46 45.10 217.55 29.86 20.49
04/01 4,019.87 32.18 43.31 44.64 219.70 30.14 20.11
04/05 4,077.91 28.76 41.64 42.90 222.29 29.78 19.03
04/06 4,073.94 32.75 43.38 44.35 226.55 31.50 20.16
04/07 4,079.95 30.96 43.39 43.89 222.00 29.51 19.65
04/08 4,097.17 29.78 41.88 42.29 226.77 29.04 19.25
04/09 4,128.80 27.16 42.00 41.88 219.67 28.47 19.22

参照:アルケゴス余波、市場が恐れる株式売却益の課税強化

2021年4月9日 14:06 日経新聞 豊島逸夫(としま・いつお)

米議会でアルケゴス問題関連の公聴会が開催され、関係各社の幹部を証人として招集しようとする動きが顕在化してきた。そこで、市場が最も危惧するシナリオは株式売却益への課税強化だ。

既に、バイデン大統領は選挙期間中に富裕層の株式売却益に4割程度課税する案を示してきた。そして就任後に勃発したアルケゴス問題。「富裕層マネーの暴走、手助けする投資銀行、利用されるデリバティブ金融商品」の構図は、バイデン政権の金融規制強化を後押しする。

まずは、問題視されている「ファミリーオフィス」(富裕層の自己資産管理会社)に情報開示義務が課せられる可能性がある。実は、「株式スワップ」の利用者などについては、アルケゴス問題なくしても、今年から来年にかけて金融規制改革法(ドッド・フランク法)の適用範囲内として情報公開などが規制強化されそうだとの報道もある。

同法は約10年前に立法化されたが、トランプ政権の規制緩和路線のなかで米証券取引委員会(SEC)が実質的に骨抜きされ、実行が大幅に遅れていたのだ。仮に規制が強化されれば、ファミリーオフィスはヘッジファンドと同じ扱いになり、四半期ごとに13Fという様式の保有銘柄報告書でSECに報告を求められる。

各ファンドの13Fは、四半期の最終日から45日以内に提出され、SECのネット上で公開される。ちなみにバフェット氏のバークシャー・ハザウェイも、この規則にのっとり四半期ごとに保有株式銘柄と保有量・保有額を開示している。ファミリーオフィスに適用が遅れたのは、「財産管理会社で運用は保守的」と見なされていたからであろう。

富裕層の資産保有状況を明らかにしたうえで、バイデン政権は「富める者から中間層への所得再配分」に動く。株式売買益への課税は、この延長線上に位置する。ここでは、年収いくらからを富裕層とみなすか、線引きも問題となろう。一般的には年収40万ドル(4千万円超)がめどとみられるが、民主党と共和党の駆け引き材料にもなっている。

市場がさらに危惧するのは、今回使われた「株式スワップ」というデリバティブ商品への規制だ。当該商品に限定せず、デリバティブという範囲に対する規制強化に発展する可能性もある。特に、「オプション」がやり玉に挙がると、影響は大きい。そもそもオプションは一定の手数料を払えば損失を限定できる、という投資家保護の発想で開発された。しかし、今や手数料を払えば、実質的にレバレッジ(てこ)をかけて売買できる投機的商品となってしまった。今年話題になったオンライン掲示板「レディット」の個人投資家の売買でも、オプションが利用された。

半導体が産業のコメとすれば、オプションは現代金融のコメといえるほど、様々な金融商品の「部品」として使われている。オプションなしで投資銀行業務は成り立たないといっても過言ではない。かりに、ここに規制のメスが入れば、市場の流動性は悪化する。

原油市場が典型だが、ドッド・フランク法で売買規制が強化され、大手投資銀行が相次いで原油トレーディング部門を縮小・閉鎖したことで、リスクをとるディーラーが減り、価格乱高下が激化する結果になってしまった。規制が強化されると高いボラティリティー(変動率)が常態化しかねない。

しかし、バイデン大統領は、お構いなしの姿勢だ。ウォール街のエリート集団とは距離を保ち、中間層を重視する。株価を政権の通信簿として重視したトランプ前大統領との対比が鮮明である。

投資銀行業務への規制が強化される可能性もある。多くの大手投資銀行はリスクが大きいトレーディング部門から、安定的収益が見込める富裕層ビジネスへ注力しようと戦略を転換中である。そのさなかに起こったアルケゴス問題は、「痛い」の一言であろう。規制強化でトレーディング部門のリスクは更に大きくなり、当て込んでいた富裕層マネーは内向きになる。クレディ・スイスは富裕層業務を得意分野にしていたので、ダメージは大きい。日本勢も個人顧客の高齢化に伴い、国際業務への依存度が高まるなか、試練の時期を迎える。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました